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黒色火薬の奇跡

投稿日:2021/12/04
打上花火の発射原理は単純です。片方が閉じられた金属筒を地面等に固定し、底に揚薬と呼ばれる火薬を入れ、その上に花火玉を落とし込み、点火します。
つまり揚薬の燃焼ガスの圧力によって花火玉を打ち上げるわけです。かつては打ち上げ筒の側に花火師がいて、花火師が火種を投げ込んでいましたが、今では電気点火が主流になっています。
打ち上げ筒は古くは木製、その後は鉄製が使われていましたが、今では軽くて丈夫なステンレス製や繊維強化プラスチック製が使われています。打ち上げ筒の内径は、揚薬の燃焼ガスの漏れを減らすため、花火玉にあわせて決められていて、直径28.5cmの花火玉(10号玉)の場合で、内径30.3cm、板厚約1.5mm、長さ約1200mmの打ち上げ筒が使われます。
揚薬には黒色火薬を小粒にしたものが使われます。黒色火薬とは、硝酸カリウム、硫黄、木炭を原料に作られた火薬です。6世紀頃に中国で発明されたといわれています。火薬には他にもニトロセルロースやトリニトロトルエン(TNT)がありますが、その中でも黒色火薬は、圧力発生までの時間が丁度良く、花火の打ち上げに大変適した性能を持っています。


(出典:新井充(2016). 花火の事典 東京堂出版 pp.71)

花火大会の会場で、「ドン」と聞こえたその瞬間、打ち上げ筒の底では7気圧のガスが発生し、10号玉の花火玉(重量約8kg)の場合は、初速約100m/s(時速360km)で打ち上げられ、約6.5秒で地上から高さ300mの位置に到達し、直径320mのいわゆる花火になります。
シミュレーション花火では、擬似的に音を鳴らし、打ち上げという物理現象をコンピューターで計算して映像にしているわけですが、映像でドン~ヒュルルル~ドーンと花火が開く間に、これらの現象をシミュレーションしていることに思いを馳せると、シミュレーション花火がもっと楽しくなりませんか?

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